会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
会話形式で楽しく学ぶ人事労務管理の基礎講座
文書作成日:2022/5/12


 木戸部長が昨年1年間の工場の総労働時間を確認したところ、7・8月は残業時間がほぼなく、一方、2・3月は残業時間がとびぬけて多く、土曜日の休日出勤をしていた状況が確認された。割増賃金の負担も大きくなっていることから、残業時間の削減方法はないかを社労士に相談することとした。

 さっそくですが、工場の昨年の勤務実績をみたところ、7・8月は業務の閑散期でほぼ残業はなかったのですが、2・3月は残業時間がとびぬけて多く、さらにほぼ毎週のように土曜日出勤をしていました。会社にとって人件費(残業代)の負担が大きく、また、「休日出勤があるとプライベートの予定を立てづらい」と従業員から不満が出ています。今後もこの時期的な繁閑は続くと考えているため、対策を打ちたいと考えています。

 なるほど。1年間の中でも業務量に差があり、その結果、労働時間に波ができるということですね。そのような状況であれば、1年単位の変形労働時間制(以下、「1年変形」という)が活用できそうです。1年変形は、1年以内の期間を通じて週40時間を超えない範囲において、繁忙期に労働時間を増やし、閑散期には労働時間を減らすなど、効率的に働かせることができる制度になります。

 1年変形を導入することで、7・8月の労働時間を減らし、2・3月の労働時間を増やすことで、現状と同じような働き方であっても、2・3月の残業代が削減できるということですね。

 そのとおりです。例えば、7・8月の1日の所定労働時間を7時間としつつ、2・3月にあらかじめ土曜日の出勤日を作っておくという方法です。導入にあたり、実務上の注意点をお伝えしましょう。まず1点目が、1日の所定労働時間が10時間までという制限があります。また、1週間についても52時間という制限があります。

 そもそも1日の所定労働時間の制約があるのですね。現段階では、閑散期は1日7.5時間、繁忙期は1日8.5時間として、8月のお盆に連休を作り、2月の土曜日を2日ほど出勤日にできるとよいと考えています。

 そのような設定であれば、時間の問題はクリアでき、残業代も削減できそうですね。

 はい、閑散期について1日の所定労働時間が7.5時間で終わるのかという懸念はあるので、工場の責任者にも確認したいと考えています。

 実際に業務を管理されている方に確認することは重要ですね。注意点の2点目が、1年変形を導入する際には、過半数の労働組合や従業員の過半数を代表する従業員と労使協定を締結する必要があります。閑散期は所定労働時間が短くなることで早く帰ることができるかもしれませんが、繁忙期はこれまでと同じように働いても残業代が支給されない(総支給額が減少する)ということになるため、労使協定を締結する前に、1年変形の導入の趣旨や影響を十分説明する必要があるでしょう。

 確かに会社にとって残業代の削減は、従業員にとって収入の減少につながるので、導入する際には、きちんと説明したいと思います。

 収入の減少は、私も確かに気になるところなので、業績によりますが、効率的な働き方が実現できれば賞与での還元や昇給額の上乗せも考えたいと思っています。

 よろしくお願いします。3点目は、時間外・休日労働に関する協定(36協定)に関することです。36協定には、協定できる時間外労働の上限時間がありますが、1年変形で3ヶ月を超える期間を設定した場合の限度時間が、1ヶ月あたり45時間から42時間に、1年あたり360時間から320時間になります。

 「36協定違反にならないように」と残業時間については従業員に意識させているので、しっかりと伝えておかないといけませんね。ちなみに当社では特別条項を労使協定に加えているのですが、この上限も異なるのでしょうか。

 いいえ。特別条項における上限時間は1年変形を導入しない場合と同じです。ただ、1日の所定労働時間が長くなったり、特定の週や月の所定労働日数が増えたりする1年変形では、従業員の方の心身に負担がかかりやすいことになりますので、健康面への配慮は欠かせませんね。

 確かにそうですね。今回は工場での残業代の削減からこのような話題になりましたが、他の部門も含め、効率的な働き方につながるようなことはないか点検してみます。

 部署や職種によって、繁閑の波は異なりますので、おっしゃる通り一度、確認されるといいでしょう。また、方針が決まりましたらお知らせください。

 引き続きよろしくお願いします。

>>次回に続く



 この1年変形には、特に業務の繁忙な期間に定めることができる特定期間というものがあり、連続して労働させることができる日数の限度について「1週間に1日の休日が確保できる日数」とされています。例えば日曜日を休日とした場合、翌週の土曜日を休日として設定し、連続12日勤務までとなります。ただし、過重労働の観点からは、毎週日曜日を休日とするなどの対応が望まれます。

■参考リンク
厚生労働省「1年単位の変形労働時間制」
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/040324-6.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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